医療機器業界の転職ノウハウ

6 医療機器転職 医療資格を持つ方の転職

医療資格とは専門の教育を受け・国家試験などを無事通過して、医療機関で医療行為を認められる方です。このメディカルキャリアHPからの相談・登録に入り、内定・就業に進んだかたは 1.診療放射線技師 2.臨床検査技師 3.臨床工学技士 4.看護師 5.歯科技工士です。医療資格の求人の特徴、応募のコツ、内 定取得までの作戦などを今回と次回に解説します。

求人の特徴から

1. 資格を有効に利用できる職種。アプリケーション・トレーニング・マーケティング・サービスなどでの募集。営業職はありません。
2. 専門知識・経験を重要視する。一方で柔軟性・(変化に)対応する能力なども求められる
3. 通年で募集があります。地域はほとんどのケースで本社。支社レベルでの募集は少ない。候補者の経歴・経験が資格要件と合致すれば内定の確立が高いーなどが過去の求人の状況です。

メディカルキャリアからの紹介で、内定に至る方には以下の傾向が見られます

1) 会社組織・会社での仕事の進め方に理解がある方。病院勤務の延長では内定は難しい。たとえば病院での仕事は、グループ全員(あるいは班)での作業分担という傾向になりますが、会社・組織の中での仕事は個人に仕事が割り振られ、あくまで個人が達成する。場合によっては残業・予定外の休日出勤などもあり得る。ここを理解しないと難しい。

2) 専門知識、これに相反する変化適応能力。どのような事かというと例として画像検査をあげます:
CT/MRI/核医学の検査何でもこなせ、学会発表も何度も経験している。ここまで習得するには一般的に10-15年はかかりそう。では企業側はそこまでのベテランを希望するかと言うと、どうも違う。より適応能力(=フレクシビリティ)を求めている。

3) 通年募集ですが、これは企業・職種・勤務地域を柔軟にすればいつでも応募は可能と言う意味で、全企業が通年求人しているわけでない。一方で求職する側にも希望の会社・職種はあり、その好みは営業職などの希望と比べはっきりしている。そこですんなり希望する会社に転職するため作戦は必要。過去のケースでは希望の企業がオープンになるまで2年待機して、ようやく内定を勝ち取ったかたも。

以上内定までの道のりは、仕事内容をよく理解し(やる気を見せる)、会社組織に適応できる柔軟な姿勢をみせ、希望企業があれば特別作戦をたてるーに尽きます。

医療系の専門学校あるいは大学を卒業して病院・医院に就業、5-6年たち、検査技術も一通り経験した時期、年齢にして30歳前後、職場では「ようやく一人前」と認められ、これからが嘱望されるーこうした方からの相談が多い。転職の理由・背景を聞くと多くの方がこんな話を:

医療機関での仕事の進め方に違和感、と言うか「違うやり方があるはず」とビジネス世界に眼を向けましたと。ではその背景はというと、

「病院の検査・治療のプロセスは職能と時間配分で分業されている。合理的・効率的でかつ専門職として仕事を覚えられるのですが、一方ではプロセスの「歯車」という感覚になってきます。これが気になった」(=転職成功した放射線技師の方、男性33歳)
たとえば画像の検査は「初診の患者さんの症状・訴えに応じた検査の流れを医師が決定し、その順番により精密な検査に進んでいく。それぞれの検査法:一般撮 影、エコー、CT、アンギオなどにそれぞれ技師が配置され、流れ作業で検査し、部位に会わせた画像を出していく。時間がきたら終了で、次の方と交代。それ の繰り返しが病院の勤務」

それぞれの過程で専門性を高め、さらには間違いを防ぐためには正しいやり方ですが、「このままでは仕事が面白くない」と感じる若手の技師さんもいるようです。こうした理由で転職相談にはいる方には企業での勤務を説明します:

まず「責任範囲が決まっている。たとえば放射線技師さんが企業に入ってアプリケーション職に就業するとして、その装置の限界性能を引き出し、それを拡販の手段に活用し・文書にするなど資料作成し、製品が納入されたら…といろいろ仕事が回ってくる。さらにその仕事を成就するのは、その人の責任なので「時間になったから帰ります…難しいのでやめた…といった事はできない」。言わば企業ではジェネラリストになってもらいたい。

このように説明いたします。すると納得して、プロセスの歯車ではない「責任と仕事範囲の広い」企業勤務をより希望するようになります。

画像診断装置のなかで価格も手頃なエコー(超音波装置)は病院で人気が高く、売上げも順調に推移していま す。エコーの検収立ち会いと操作指導の担当者は慢性的に人手不足。ある小規模クリニックに勤務している27歳(女性)の臨床検査技師さんから相談を受けました。

「エコー検査が一番楽しい。検査の手順記録など自分の手で進められ、結果もコメントで依頼してきたドクター に報告できる。このコメントが病名決定に役立つ」。検査技師さんの仕事は裏方が多いと聞きますが、エコー検査では重要な位置にあるようです。腹部の検査を 中心としていたが、心臓検査も始めたとのこと。
「クリニックでは他検査の時間も多い、エコーのアプリケーションの専任になりたい」がメーカー転職の動機。
この方がエコー検査に対して前向きの姿勢、特にスキャンの位置・角度などの工夫で、いかに部位を画像に抽出できるかを勉強していた。超音波に力入れている企業に紹介、内定がでました。

経験知識でこれ程の方は少ないと感銘したのが、都内の大学病院勤務のSさん、診療放射線技師。主として CT・MRIの検査経験があり、検査部でリーダー。技術学会での発表が多く、最新のCT導入の経験では肺野と心臓検査で貴重な報告も。ただし年齢が40歳代のはじめ。ちょうどB社でMRIのアプリケーション職を探していました。年齢枠があるかどうか問い合わせして、シニアな方でも応募可能を確認して紹介。

2-3次面接と進みましたがなかなか結論を出してくれない。1ヶ月以上経ってから「今回採用を見送りします」 との返事。経験知識は申し分なく、人格も円満そのものでしたが残念。理由は後日聞いたところでは「これまで企業つとめの経験が無かった。年齢からすると組織の中で指導的立場になってもらいたい、しかし病院内での指導力と企業内での指導力の差が理解できるだろうかーという疑念から断念しました」とのコメン ト。

病院の検査は持ち回り、検査技士・放射線技師さんが特定の検査法の専門家になることは少ない。しかし高度な技術が必要の検査には「この人」という強い技師さんがいることは事実。好みもあって、特定検査に多く時間を取り、さらに技能を向上させる事はよく聞きます。30歳代も半ばになると、この検査では人に負けないーという方もでてきます。放射線治療装置(=直線加速器)のメーカーに決定したW さんはこのケースに当てはまります。

Wさんは30歳代のちょうど半ば。東北地方の公立総合病院に勤務。10年以上の病院経験があり、放射線検査はすべてこなせます。ただ他の方と異なるのは治療の経験が長い。また第一種放射線取扱主任の資格を持っていること。コバルトなどの核種を扱うのに必要ですが、保持者は少ない。仕事経歴をじっくり読むと、治療の経験が評価される方なのですが、本人の希望は診断。CTなどのアプリケーションを希望していました。公開募集があった2社に紹介いたしました。 結果はNG。

ここでのNGの理由はおそらく見比べによる不利。CTのアプリケーション職はそこそこ公開募集があります、しかし応募する方も多い。20歳代後半・30歳 代前半の方からも問い合わせはあります。となると30歳代後半は不利(=知識は深いが適応力の面で柔軟性におちると判定される可能性があるという意味です=)。

そこで治療のアプリケーションへ方針転換を提案しました。治療機も治療計画コンピュータも知っているので、治療メインんの会社に問い合わせして、ヨーロッパ系大手企業に紹介。ここでは経歴が高く評価され、採用決定になりました。Wさんの話では「面接での対応が違っていた、診断のアプリケーション職では表面的な質問で終始した。一方治療機の面接では、仕事経験を専門的に深く質問を受けた」とのこと。

臨床工学技士でのケース。Aさん
関西の私立病院勤務。転職の理由はざっくばらんに聞いたところ、病院勤務に「飽き」がきたから。勤務内容を聞くと、仕事のほとんどが透析の介助。機械装置のメンテナンスという工学技士の仕事も含まれますが、透析の患者さんのケアなどどちらかというと看護師さんの仕事の肩代わりが多い。仕事が単調なのと仕事巾が狭いので、このままでは目指している「人工呼吸器」「人口心肺」などの仕事の経験知識を得ることができなくなるーのため。年齢も20代後半、面談してしっかりした印象なのでメーカーのサービスとして呼吸器メーカーに紹介進めました。

年齢性格も採用基準に合致しているので、短期間で採用決定。ここまでは順調でしたがちょっとした予想外が。予想外でも本人は問題なく受け入れましたが、企業での仕事がサービスではなく技術営業。私の理解不足があったのですが、臨床工学技士さんの経験資格は決してフィールドサービスに向くとは限りませんでした。技士さんの仕事は法律の条文を引用すれば:

>医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行うことを業とする者」(臨床工学技士法第2条)<
とあります。第一の目的は装置の安全な使用と日常的な保守、いわばしっかりしたドライバーの役目で修理作業は想定していません。となると故障を迅速に直す使命のサービスには経験不足。Aさ んもその点は承知して、提案された仕事をOKしてくれました。お客さんが病院の技士さんなど入れ替わった環境での仕事ですが、しっかり適応して戦力となっ ていると聞きます。

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