医療機器業界の転職ノウハウ

2 提出書類を面接につなげる作戦 (戦術的職歴書とは)

2-1 経歴を正しく 「戦術的」 に書き込む

多くの転職雑誌で書類のまとめ方を特集してます。内容を拝見すると新卒、あるいは第二新卒を対象にしているようです。仕事経歴が無い・少ない。履歴書・自己PRを中心にして職務経歴書は従にーという案内が多いように思えます。面接に対しては「肉弾戦」当たって砕けろ的なアドバイスもあります。

医療機器での中途採用となるとその作戦では成功しない。履歴書・職務経歴書、時には英文のレジュメに自身の仕事経歴を正しく、かつ戦術的に失敗しないように書かないと面接には進みません。これはたとえ1年の経歴でも、その1年で何をしたかをしっかり書くことが成功につながります。

今年に入りまして、転職相談を何例か実行しています。先日はある方(医療資格者をお持ち)の方と話しました。5年の仕事経歴ですが、しっかりとした仕事を遂行していました。しっかりという意味合いは 1 新しい臨床技術に関心があり、院内に導入するために企画・実行  2  計画を立てるときには関係者 (ドクター、技術長など)に全体の流れとメリット(デメリットも)の説明ーを聞き取りました。すばらしい行動ですね。評価されます。

それが職務経歴書に書き入れてなかった。ごく簡単に「XX装置で立ち上げに参加」とだけでした。その理由は「面接に入って、質問がでたら説明しようと思っていた」でした。経歴がなくても面接に入るのは学生の特権。社会に出たら仕事経験をそれなりに積み上げているので、その記述を書き落としてはいけない。経歴書を「従」にする「就活」のスタイルが頭に会ったのかもしれない。社会人になって初めての活動なので、切り替えが上手くいかなかったかもしれません。

2-2 しっかりと経歴実績を書き入れられた職務経歴書の効果は

1 中途採用者には即戦力を求めています。過去の仕事内容を正しく書き込み、経歴・実績・技能が彷彿となり、即戦力のイメージにつながる。たとえ仕事歴が短くても、それなりの「経験」がある。経験年数が短くても、その間の仕事内容を書き込む事で、それなりの(=若い方なりの)即戦力期待がでてきます。
2 仕事経歴と実績が書き入れてあれば、面接にすばやく進みます。

実績・成果(あるいは失敗なども)が不明のままだと、企業の採用担当者は「面接に進むのは無駄かもしれない」と消極的になります。これが上記の「経歴を正しくかつ戦術的に失敗しない」の正しいという意味合いです。

では表題にある「戦術的に失敗しない」書き込み方とは。

2-3 戦術的に失敗しない書き込み方(その1)

1 書き込み内容の選択
2 選択した内容を具体的に書き込む工夫
3 それをもって面接に臨み、かつ面接の安全通過をねらう

となります。

1 は理解しやすいと思います。営業職の求人に応募して、営業の経験を書き込む。もし経歴の途中で、経理とか物流の仕事があったときは数行で流す程度にするか、こじつけでない程度で営業との接点を書き込む。その経歴が無駄ではないと説明する。
さらに細かく見ると、求人がたとえば「循環器機器の営業」と指定されているとき、「循環器営業」の経験が長い場合は問題ないのですが、短い場合は、この期間が短期間ではあるにせよ、系統だって書き込む。トレーニング・製品知識の習得・販売経路の勉強・競合製品・(もし実績があれば)新規開拓の成功話など詳細を書き込む。読む方に「短いながらしっかり習得している」点を印象付ける。

2 は書き込み方の工夫です。 企業は実績数字+行動様式に関心を持ちます、平たく言うと:これだけ営業成績を上げた(数字)。このようにして工夫・努力をしていた(行動)の両方に関心を持つ。達成数字が運がよかった・景気がよかったなど他力の結果でなく、自身が狙って・企画し・実行した結果であることをアピールしなくては。営業を例にとります、営業数字は月間500万円、数字としては会社の中で平均、ただその多くが
「これまで会社として実績がなかったA地区からの新規開拓」
「A地区に浸透するための特別プロジェクトを立案」
「オピニオンリーダーとされるC教授に取り入るために日参、新製品の評価をお願いできるまでに」

例としてですが、こうした記述であれば関心を呼びます。関心を呼ぶ書き込みが重要。書面を読む方(人事・部門マネージャー様など)は関心がでる候補者にだけ、面接にお呼びかける。これが1と2.もう少し具体的には:

募集する部門の長が応募書類を読むとき、多くは複数の候補者分をまとめ見る。その時点で「面接・見送り」の選別が入ります。具体的に詳細に書かれている書面には関心が発生します。同時に本人に会ってみたい、面接で確認したい内容の2-3も出てくる。関心を持たせる書面かどうか=こうして面接に進むことになります。

ここからは 3 の面接の安全通過です。中途採用の面接では必ず「仕事・経験・実績」の確認があります。このやりとりを通して、経験の深さ(浅さ)、技能の熟達度合い(未熟さ)を確か めてます。この時面接者(現場の長・人事の採用マネージャー)が前もって注目していて、2-3の確認したい点をメモしていたらどのような展開になりますか、以下のようになると思います。

候補者側から「これまでの仕事経験」の説明して、経歴書の通りと安心します。面接側からの質問は前もって気になっていた(確認したい)2-3点。これはあなたの書き込んだ経歴書のなかからの質問点なので、答えられる(答えに四苦八苦しない)範囲。面接がこのように運べば、質疑内容も具体的、真摯に対応されて面接後の印象が良い。このような面接でないと先に進みません。いってみれば質問が集中するのは「このあたりだろう」とヤマを張って、そこに質問が来た時 の答えを用意しておく。面接内容をも見越した履歴書・職務経歴書です。

戦術的に成功する書類の書き込み方とは上記のような「面接を誘導できる」内容が正しい。これまでの内定獲得はこのパターンでした。

逆の場合を想像してください。書類での書き込みが不足・的はずれの場合。面接する側があなたの経験・実績をイメージできない。確認・質問点も特に思い浮かばない。ただ「年齢・経歴で適性がありそう」なので会って見るか、面接ではあなたの仕事経験の説明にも注目度が低い、質問内容も的をえない。全体に真剣さが足りず、終わって後の印象が薄い。何人かの面接が終了して後忘れられそうです。

2-4 戦術的レジュメと面接対策で成功した山田さん

営業で応募し面接の運びになった山田さん(仮名)のケース。山田さんは首都圏でも活気ある神奈川県を中心とする中規模化学商社で営業活動していました。経験5年で年齢29歳。医療機器のの経験、すなわち病院を回りの経験はありません。面談して、山田さんの営業の進め方に注目しました。新商品の拡販では地域セールス#1、全国でも常に5指以内に位置しているーとのこと。拡販の組み立て方を尋ねると:

「まず製品知識を頭に叩き込んで、近い商品があれば応用例など資料集めして(インターネットから)どのように使用するかを調べる。研究所・製造の検査部などが売り込み先で、アポを取って製品紹介から実際の使用例まで説明。プレゼンで勝負する」 「当然相手もよく知っているので、話をしながら知識吸収、次の営業での説明材料をお客さんからも吸収している」。この進め方は医療機器と一脈通じると思いました。

そこで、新製品の導入と市場開拓を中心に職歴書を作成してもらいました。実際の活動時間は商品の搬入・売上回収・クレーム対応・報告書作成等に追われて、30%しか開拓に回せません。しかし伝票処理とか配送などの経験は関心を持たれないので、文言には入れませんでした。

面接に入る前に、面接がどのように進むか、質疑応答のシミュレーションをしました。これは「面接リハーサル」に当たります。面接する側の立場になっての質問を思い浮かべました。その時のアドバイスはやはり開拓営業の実際行動。山田さんの経歴書を読み返して、ここに質問が集中すると予想しました。

山田さんには「ある成功した1例での組み立て方を思い起こす(職歴書に記載されているなかから)、それを面接中に自身から説明する。各種の質問・掘り下げがあるので簡潔に応える。さらに失敗した例も念頭に入れる、これも質問がありそうなので」

面接のあと連絡で「質問は80%ほど想定したシナリオで進んで、あわてることがなかった」という元気な報告でした。山田さんは2次に進んで採用決定となりました。真剣なやりとりの面接、手応えが感じられます。

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