医療機器業界の転職ノウハウ

4.職種別転職作戦1(医療資格者)

1 全般解説

病院勤務の方・医療資格を有する方が医療機器メーカーへ転職する動きが盛んです。メディカルキャリアにはこれまで多数の方から相談登録がありました。専門の知識・臨床の現場での豊富な経験を有する方々とお話ししてきた機会と経験は私共にとりまして大変貴重な財産です。
相談の後、転職活動を開始、紹介企業の選定も終えて、面接に進む訳ですが、ここから先に明暗が分かれます。希望通りにメーカーのアプリケーションを獲得する方もいれば、残念ながらNGというケースもあります。採用決定のケースを基準に、NGの反省をふまえて以下にコ・メディカルの転職事情を解説します。

2 募集の背景・需要

益々高度化する医療機器ですので、営業担当のスキルだけでは顧客(病院・ドクター)に正確な性能などを伝えきれないケースも生じます。そこで、医療機器メーカーでは、実際に医療機器を使用・管理しているコ・メディカルの資格者に機器の使用トレーニング・デモンストレーションなどを通じて製品の紹介を委ねることとなります。その他 、メーカーがコ・メディカルの方を対象として想定しているポジションは次の通り多岐に渡ります。

募集職種:
アプリケーション、カスタマー(フィールド)サービス、マーケティング、営業技術、薬事申請・臨床開発、品質保証

アプリケーション

製品検収でも資格者は有用です。検収(=受け入れ検査)には構成・付属品のチェックをする経理検収がありますがこれは営業の担当の仕事。大型装置は経理の検収の後に、テストランして性能など技術面を確認する、いわゆる技術研修があります。以下の検収を担うのが医療資格者の役割です。

1 装置の基本性能のチェック(いわばカタログデータが出ているか)
2 限界性能の確認・負荷を最大にかけてのテスト
3 その施設で使用するための最適化(カスタマイズ)、時には部分改良もある
4 実際の臨床で操作性と信頼の検証

などが挙げられます。病院という医療最前線での高額機械の受け入れ、なかなか大変です。メーカーとしてこの検収に立ち会いできるのは医療資格を持ち・病院勤務経験ある方でないと難しいと判断しています。。

カスタマーサービス

カスタマーサービス職の仕事は広範になりますが、資格を有する方への期待は、電話問い合わせへの操作指導とトラブル対応が中心になります。装置が使用されて後の保守であるフィールドサービスの仕事内容は トラブル(故障)解決・対応、定期点検などの保守メンテナンスがメインの仕事となります。

マーケティング、営業技術

マーケティング、営業技術は上述のアプリケーション職との比較ではよりプリセールス(製品の販売前)色が強いポジションです。購入を検討する顧客先に出向き性能・臨床上の利点など高度な説明を担当します。

営業サポート的な職務ですが、本来のマーケティング(製品の仕様・構成の企画など)にも語学スキルのいかんにより発展が期待できるポジションです。

職種 資格 仕事内容
アプリケーション 診療放射線技師
(画像診断装置)
臨床検査技師
(X線を使わない 検査機器、超音波装置、MRI)
装置の操作実地指導。
デモンストレーションは製品の販売前に外観・機能・使い方などを説明する仕事。検収の立ち会いでは「技術研修」を担当する トレーニング
カスタマー
フィールドサービス
診療放射線技師
臨床検査技師
(体外診断機器など)
臨床工学技士
(呼吸器麻酔機、人口心肺など)
コールセンターで顧客からの問い合わせ、トラブル対応
使用する現地に出張してトラブルシューティング、メンテナンスなど
マーケティング
営業技術
診療放射線技師
検査技士
工学技士
歯科技工士
製品の規格構成などの策定
営業文書の作製、営業支援
(購入を検討する顧客先に出向き性能・臨床上の利点など高度な説明)
薬事・臨床開発 薬剤師
検査技士
薬事法の専門家として各種申請作業
その他 歯科技工士
義肢装具士
オージオロジスト
 

3 メディカルキャリアの実績紹介

34%が有資格者

メディカルキャリアは医療資格を持つ方に積極的にサポートしてきました。
直近の内定では34%が医療資格を有する方でした。

放射線技師は全員が画像診断装置メーカーや放射線治療装置メーカーに就業、装置開発・更新需要の活発のなか 貴重な戦力として活躍しています(アプリケーションとマーケティング)。

臨床検査技師は超音波(エコー)のアプリケーションとして活躍。検査技師のもう一つの職種(細菌検査などの体外検査)での仕事の出現率は少なめでした。

薬剤師は、薬事法のエキスパートとして申請・臨床開発の場で実力を発揮されています。

臨床工学技士はフィールドサービス・カスタマーセンターの場で評価されています。

期待される経歴・人物像は?

経歴:病院勤務して検査などローテーションを巡り、それぞれに平均以上の経験・知識 を持つには10年+αは必要と思われます。その時は35歳+αの年齢。 メーカー各社の選考基準はそこまでの習熟度は必要としていません。より若い方に有利な傾向がみて取れます。

この理由はメーカー側の選考基準が1)装置を習熟している即戦力 2)会社勤務に対して柔軟 性がある事を挙げているためです。30歳代後半までの10年を超す病院勤務経験者は、企業勤務に 対応するのは難しいとした判断基準があるためです。当然人格・人性によりけりですが・・・。柔軟性と対応力のある方が選考されています。

20歳代で経験3-5年の若手は、臨床経験ではまだ未完成としても、企業での柔軟性は期待できるとした現状がございます。

4 Q&A

民間の企業へ転職することのメリット・リスクをまとめました。ここでの医療資格者は診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、薬剤師などです。

メリットとして

1 仕事内容が広がる

新規技術を習得できる、その臨床応用を開発できる、出張(海外も)がある、いろいろな人と話できる 等々
このような変化を望む方には利点が多く、望まない方には苦痛となります。また仕事のテンポも早く、新技術など早急に体得することが求められます。
病院の検査室で仕事を続けたいという方には企業への転職はお勧めできないかもしれません

2 将来出世する(?)

全員が出世することにはなりません。努力と運で部長、取締役に昇進する可能性はあります。病院と比べると、院長・部長になるには医師でないと不可能。それに比べると本人の努力次第で将来性はあります。昇進すればそれだけ待遇がよくなります。が、しかし相応に仕事も厳しくなりますのでその覚悟を・・・。

3 転職で給与がよくなる??

微妙なところです。病院勤めの方は世間一般からみて決して悪い給与ではありません。女性で30歳代であれば一般より良いケースが多い様です。これは夜勤など交代勤務があるので、手当が結構多い為。企業勤務では夜勤、土日出勤は多くはありません。時には、給与が下がるケースもあると理解いただくのが良いかもしれません。

リスクは

1 会社は競合の世界、取り残される

いつの間にか取り残されたり古臭いと思われてしまう。競合とは決して同じ資格を持つ同僚とではなく、会社の進歩との競合があります。

医療資格者は営業などの一段上を行く日々の研鑽と理解力もって、製品を自在に駆使できないと=>古臭いといわれてしまう現状を目の当たりにします。

2 当然異動・転勤あります

企業に転身を考える方はこれらリスクをよく理解し、自身で対策を練れる柔軟性が必要です。その点から若さ(20歳代)は転職での1つの重要ポイントです。

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